LOVOT TALK SESSION
林 信行

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LOVOTとは、
手間が掛かるけれど、それ以上のメリットがあるロボット

リアルに生き物のような感じがして驚きました

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信行:
へ~! これがLOVOTですか。
要:
それぞれの見た目にも、個性がすこしあるんですよ。
信行:
顔もそうだけれど、それ以上に身体の動きの表情が豊かで、つい触りたくなりますね。
要:
愛着や信頼関係をより深めるためにはスキンシップが大事だと言われています。以前、人とのスキンシップを重視したロボットが登場したのですが、人のサポートがないと愛着形成がうまくいきませんでした。LOVOTはその問題を解決するために、現代の最先端のテクノロジーを投入しているんです。
信行:
なるほど。触感もそうですが、この全身で抱っこしてくれのアピール。これは、つい抱っこしたくなりますよね。抱っこした後も、なんだか生きているような感じがして驚きました。
要:
実はその生き物感を出すために、見えない所で様々な工夫を施しているんです。1つの大きなポイントは、このLOVOTはペットのように飼い主が世話をしてあげなければならないということ。一見面倒な行為に愛着を育む機会が隠れているんです。
信行:
人間同士でも同じですよね。ただの便利な人になっちゃうと、感謝もされないし、段々愛情も薄れていって家庭でも問題になる(笑)。実は最近僕も、これからの時代は手間がかかる物、面倒臭い物にこそ、人間らしさを感じるんじゃないかと考えていたんです。効率化された物は快適かもしれないけれど、付き合いがドライで短時間でぱっと終わって、全然感謝のこもっていない、言葉だけの「ありがとう」で終わっちゃうというケースが多いですよね。
要:
そう、その点こそがROBOT(ロボット)とLOVOTの最大の違いなんです。人の代わりに仕事をする一般的なロボットは、スイッチを押したら最後、仕事が終わるまでなるべく自身の存在感を消します。それはまさにドライな関係で、「便利な人」ですよね。でもLOVOTは逆にいろいろと手間がかかります。
信行:
なるほど。LOVOTは人の仕事を奪うどころかむしろ人に余計な仕事をさせると(笑)。
要:
そうです。人に手間を掛けてもらうけれど、人はそれ以上のメリットを享受できる。そんなロボットを目指しているんです。
信行:
確かに従来のロボットとは全く別のアプローチですね。
要:
LOVOTをひと目見た瞬間に様々なことが想像できるような、いわば“想像力の依代”を創りたいのです。例えば、我々は言語によるコミュニケーションができない犬や猫に対して、その仕草や表情、鳴き声などで自分に都合のいいように解釈してかわいいと感じる面がありますよね。このように適切に情報が欠落していると、人の想像力はむしろ活発になるという現象を無機物のロボットでもチャレンジしている事になります。LOVOTに搭載されているコンピュータやセンサーは、通常、一般の消費者が持ちうるIT機器の中では最も計算処理が高いレベルなのですが、それだけ高度で複雑なテクノロジーを投入しつつ、人の代わりに仕事をしないで、むしろ人の仕事を増やす。そういう新しい存在なので、お客様全員にご理解いただくのには、かなりの時間がかかるかもしれません。このようなLOVOTが正式に発売されたら、社会に何らかの影響を与えられると思われますか?

LOVOTは多くの企業に新たな気づきを与える存在

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信行:
お話をうかがっていると、このLOVOTは高度なテクノロジーが投入されていながら、まさにアートな面もたくさんありますよね。アーティストってそれまで他の人がやらなかった新しいことに挑戦して既存の枠や古い価値観・常識を壊し、それによって多くの人達に新しい気づきを与えるという面もありますよね。そういう意味ではこのLOVOTも従来のロボット開発とは全く別のアプローチを取ることによって、多くの企業が「なるほど、そういう発想もありなのか」と気づくきっかけになるんじゃないかと思います。
要:
昔はコンセプト面でも発信力があった日本ですが、ここ20年ほどは特にIT系のイノベーティブなコンセプトはアメリカ西海岸から発生して、我々はそれらを享受するだけという立場に甘んじてきました。ですので、そろそろ以前のようにコンセプトに裏打ちされた開発力を取り戻し、もう一度新しい産業を世界に発信したい。LOVOTにはそんな思いも込められているんです。
信行:
なるほど。実は僕も最近、ある連載記事で、要さんがおっしゃったようなことを書いたところなんです。確かにアップルやグーグルなどのシリコンバレーのIT企業が検索やスマホ・PCのOSなどプラットフォームの根幹を構築したことによって、これだけIT技術が一般市民の生活の中に浸透しました。一次産業から三次産業まで、老若男女皆がIT機器をやすやすと使いこなしています。しかし、ITが水道や電気と同じように誰もが使える当たり前のインフラになった時代に、果たしてシリコンバレーの企業人たちがどれだけ一般的な生活者と同じ感覚を持ちえるかと思うんです。つまり、シリコンバレーの人たちっていわゆるギークと呼ばれる、テクノロジーが大好きでネットリテラシー・ITリテラシーが高すぎる人が多いのですが、彼らが中心となって創るITの革命的な製品・サービスは徐々に曲がり角に来ているような気がしてならないんです。一方、日本は要さんがおっしゃる通り、コンテンツ、ソフトパワーに関しては世界にすごく大きな影響力をもっています。それは海外の新しい世代の若者たちも十分に感じていると思います。
要:
日本が長らくシリコンバレーの後塵を拝してきたのは、ソフトパワーがとても強いのに、それがハードウェアとなかなかうまく結びつかないという点だと思います。これにもう一つ、アートがうまく融合するとイノベーティブな新しい文化を生み出すことができるんじゃないかと思うんです。ただ、この3領域は言語も文化も全く違うので、実は融合が難しい。多くの会社では衝突しています。
信行:
そうですね。どの会社でも3者、お互い憎み合っている感じすらしますね。理系・文系で分ける日本の教育の問題もありますよね。

組織をフラット化し結束力を高めることで新産業を生み出す

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要:
それもあると思います。ただ、当社の場合は、3領域の若者たちがとても仲良く働いているんですよ。その理由はハードウェア、ソフトウェア、アートと3部門に分けるのではなく、部門の垣根を取り払って組織をフラットにし、結果に対する責任を皆で負うという形にしているからです。これによって、もちろん3つ、それぞれ役割分担はあるのですが、皆で力を合わせてひとつの製品を作るというモチベーションが高まったのです。
信行:
なるほど、それは興味深いですね。
要:
そうなると、今日見ていただいたLOVOTのように、アート担当のスタッフが描いた実現したいことをハードウェアの担当スタッフやソフトウェア担当スタッフが頑張って実現する。その歯車が徐々にうまく噛み合うようになっているという実感があります。このように部門間の垣根を取り払う努力をし続けることによって、新産業を生み出すことができるんじゃないかと思ってるんです。
信行:
すごい! まさに日本にはそれが必要だといつも自分の原稿で書いてるんです。要さんはまさに体現しているので、LOVOTが完成した暁には成功事例としてぜひ紹介させてください(笑)。
要:
ありがとうございます。予定通り完成させるように頑張りますので、その際にはぜひよろしくお願いします。
次回はテクノロジーとLOVOTの関係性や、LOVOTの可能性などについて語り合っていただきます。ご期待ください。
林 信行(はやし・のぶゆき):
ITジャーナリスト
1967年、東京都生まれ。中学生の頃からITに興味をもつ。1990年、米国ヒューストン大学留学中にプロとしての執筆活動を開始。アップル社の製品発表に招待される数少ないジャーナリストの一人だが、マイクロソフト社の公式Webサイトでも十年以上にわたって連載を執筆。現在はスマートテクノロジー、ソーシャルメディア、3Dテクノロジーなどの3要素や自動車やファッションなどのさまざまな業界におけるIT活用の取り組みに関心を持ち、人々の暮らしや社会にもたらす変化をテーマとしている。『スティーブ・ジョブズは何を遺したのか』(日経BP社、2015年)など、著書多数。

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